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2017年3月

2017年3月 6日 (月)

「地学のススメ」鎌田浩毅著 講談社ブルーバックス

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京都大学の鎌田教授の最新刊。ブルーバックスの2002番目の刊行。そんなに出てたんですね。

東日本大震災以降、日本列島は大地変動の時代に入ってしまい、いつ地震や噴火が起こっても不思議ではない状況になってしまっているそうです。もともと太平洋プレートが沈み込む場所にある日本に住む我々日本人は、地震や火山の噴火と無縁で暮らせるはずもないのですが、日本人の地学リテラシーは高くないというのが現状なのではないでしょうか。

その大きな要因として考えられるのが高校での地学履修率の低さにあると著者は指摘しています。大学受験の理科の選択肢の中に地学が入っている大学が少ないこと。そのためおのずと高校で地学を学ぶ生徒が少なくなってしまう。そこで地学の面白くためになるところを抜き出して、少しでも興味を持ってもらおうと書かれたのが本書であるそうです。この本では46億年の地球の歴史に思いをはせる一方、身近な話題では昨年起こった熊本地震のメカニズムなどが縦横無尽に語りつくされています。

鎌田教授はフランシス・ベーコンの「知識は力なり」という言葉をよく引用されています。1000年に一度の大地変動の時代にこそ、私たちが暮らす地球についての知識は必要です。内田樹さんが何かの媒体で書いておられたことですが、武道で負けない秘訣は「後手にまわらない」ということだそうです。相手が先んじて攻撃を仕掛けてくるとまず勝てないらしい。そのためには常に先手にまわることを考えることが大事だということでした。これは、地球科学に転換してみると、地学の知識を身に着け、とりあえずは想定できる災害に備えるということになろうかと思います。けれども「3・11」以降何度も話題に上った「想定外」にも私たちは出会うことでしょう。

1000年に一度のことはなかなか想定できません。大都市の地下の活断層は調査できないので、その場所で起こる地震は想定できません。地震は複雑な物質で構成される岩石が割れることで発生するため、いつどこで起こるのかは想定できません。そもそも複雑系そのものである地球で起こることは、そのほとんどが想定外なのではないかと感じます。そういう意味では後手にまわらないことは不可能かもしれません。

けれども、鎌田教授が繰り返す「過去は未来を解く鍵」という言葉をよく理解し、過去に起こった地震などの災害の歴史をひもとくことで、やがて起こるであろう災害に備えることができるのではないかと思います。そういう意味ではひとりひとりの「地学リテラシー」をあげていくことこそ、私たちがこの日本という国で安全に暮らすための覚悟の表明でもあるのではないかと感じました。カバー帯にあった「天は人を選ばず、場所を選ばず、大地を揺らす」はタイトルの「地学のススメ」が福沢諭吉の「学問のススメ」へのオマージュだった(?)ことからの発想でしょうか。まさしくその通りだと思いました。大変興味深い1冊でした。

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