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2016年5月

2016年5月 6日 (金)

一生モノの受験活用術 鎌田浩毅著 祥伝社新書

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多くの人は、受験勉強はひとつの通過儀礼のように、大学に受かるためだけにあるもので、その後の人生になにか影響を及ぼしているとは思ってもいなかったのではないでしょうか。ところが鎌田教授は、受験勉強で身につけた知識やノウハウは社会人になってからも役に立つのだと言っています。この本では京都大学で日々大学生に接し、ビジネスパーソン向けに多くのライフハック本を執筆してきた著者が、自分自身の能力を高める方策として、受験の経験を活用することを提案しています。

それでは具体的にはどうやって活用していくのでしょうか。まずは勉強で得られるものを「コンテンツ学力」と「ノウハウ学力」に分けて考えることからはじめます。この場合のコンテンツ学力というのは英単語や古文単語、さらには歴史用語など、試験勉強のために覚えなければならなかった多くの事柄を指します。そしてノウハウ学力は、入試や定期試験までに必要なコンテンツを覚え合格点を取るための方法論を言います。そして、その方法論は仕事をやさまざまなプロジェクトを進める際に応用できるのだといいます。

短期的には期末試験で点数を取るためになどのノウハウ、そして長期的には高校3年間を利用してどんな大学に入るのかを検討し、そしてそのためにどのような計画を立て、どのような知識を蓄積していくかということ。これは見方を変えれば非常にビジネスに近いといえるのではないでしょうか。その方法論を関西の研伸館という予備校の講師たちの協力のもと、いくつかの科目について開陳しています。

たとえば、日本史について。私たちは日頃身のまわりに起こっていることをなるべく単純化してしまうのだそうです。けれども世の中のできごとの原因は必ずしもひとつではなく、少なくともふたつもしくはそれ以上あり、それぞれが重なり合って結果をつくっていくことが多いのだということです。そういう点で日本史という科目は、複眼思考を養いながら、複雑にからみあった原因を探っていく方法を教えてくれるのだといいます。こんな風に日本史について考えたことが無かったので、これには目からうろこが落ちるような思いがしました。他にも世界史、政治・経済、地理、数学、物理、化学、国語、英語について説明されています。

最後まで読んでから「あれ、倫理が無い」と気づきました。最近ではセンター試験で得点しやすいためか倫理・政経で受験する人も多く、昔と違って受験科目として勉強されることが多くなっています。でも、それだけ倫理を勉強している人が増えている割りには、身近な若者たちに「倫理的」な人が少ないように感じるのは自分だけでしょうか。新聞やテレビの報道を見ていても、倫理的なことがらを問われるような事件が後を絶ちません。そういう点では受験倫理も活用してもらいたいものだと思います。ぜひ続編として「一生モノの高校倫理」など読んでみたいと思います。ビジネスマンややり直し世代だけでなく、現役高校生にもぜひ読んでもらいたい好著だと思いました。

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