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2014年2月 7日 (金)

滝と人間の歴史 原書房

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シリーズ「人と自然と地球」の3冊目にあたる本作は、滝が人類の文化的な側面に及ぼしてきた影響を、様々な視点から考察しています。著者は地理学者であり都市・地域開発のプランナーであるブライアン・ハドソンという、オーストラリアのクイーンズランド工科大学の非常勤教授とプロフィールにあります。このシリーズの面白いところは、対象となる自然現象の本格的な専門家ではない方々が執筆しているところにあると思います。あえて違うジャンルから視ることで、複眼的に考察できるのではないでしょうか。

 

監修の京都大学の鎌田浩毅教授によると、滝そのものは地学的にみるとその成因はさほど興味深いものでもないらしい。しかし、水による侵食と風化によって起きる地形の変動は、滝の持つ美しい美観の裏側に無常観を醸し出しているのではないかと感じます。長い長い地球の歴史のある短い時間に現れた数々滝は、それを見た私たち人間の心に大きな影響を与え続けてきました。そしてこれからもその姿を少しづつ変えながら、それは続いていくのでしょう。

 

多くの文学作品によると、滝はその作品の書かれた国々によって扱い方が異なっています。太平洋の島々を舞台にしたフランスの小説家の作品では、その島々の美しい滝の光景と作品の中の官能的な生活が結びつき、あたかも滝が作品中の性的なメタファーとして扱われているかのように感じます。確かに自然の描き出す光景は私たちに暗喩を与える場面は多々あります。

 

この本でも紹介されている和歌山県の那智の滝などは、超自然的なものと結びついた神聖な場所として崇められてきました。そういった場所に赴くと、自然に敬虔な気持ちが立ち上がってくるのはなぜでしょうか。

 

それはもしかしたら、永遠に続くかと思える、断崖の上から滝つぼへと落ちる水の動きを、無意識のうちに自己の再生に結び付けて考えているからなのかも知れません。旅先で出会った滝から受けた印象が後々まで残るのは、そんな非日常的な体験が私たちに特別な感情を与えているからではないかと感じます。自然について考えることで「人間とは何か」について考えるきっかけになりそうな1冊だと思います。

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