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2013年12月16日 (月)

図説 地震と人間の歴史 アンドルー・ロビンソン著 原書房

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「シリーズ 人と自然と地球」(全5巻)の第1巻。他に「火山」「滝」「火」「砂漠」が予定されているそうです。今回の著者はオックスフォードとロンドン大学で学位をとったサイエンスライターだそうで、いわゆる自然科学のプロフェッショナルですが、本書は地球科学の側からだけでなく歴史や文化史の視点から地震の全体像に迫ろうという意欲的な作品だと思います。

著者の住むイギリスでは、マグニチュード4クラスの地震は2~3年に1度程度しか起こらないといいます。けれども、その珍しさゆえ古来から歴史のページに印象深く記録されてきました。例えばシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のセリフに登場したりと、人々の心にはその姿が刻まれています。そんな国に住む著者の目からみると、日本をはじめとする環太平洋の地震の多さと、その規模の大きさはどんな風に映ったのでしょうか。

この本では特に地震の多い日本についてもページを割いて解説されています。1855年の安政地震では多くの人々が犠牲となりましたが、1853年と54年ににペリーが来航した後に起こった安政地震と黒船の来航を関連づけてなのか、黒船をナマズになぞらえた「鯰絵」が大流行しました。ナマズがペリーと綱引きをしているものや、ナマズをクジラに、更には黒船に見立てて沖で潮ならぬ小判を噴気孔から噴出している絵など、ユーモラスな絵が紹介されています。これは、安政地震が起こったことで、幕末の不安定な社会に庶民が持った不満感が鯰絵に象徴的に表れたのではないかといわれています。その後、江戸幕府が崩壊し明治新政府が誕生しますが、その新しい時代を待望する雰囲気を作ったのは、安政地震が起こったことがきっかけだったのではなかったかも知れません。そして、そんな時代の雰囲気を版画を作った絵師たちは敏感に感じ取っていたのかもしれません。

この本の監修者の京都大学の鎌田浩毅教授はフランシス・ベーコンの「知識は力なり」という言葉をひいて、これからの日本人が生きていくうえで「地震に対する正しいリテラシー」の重要性を訴えておられます。地球科学の正しい知見を知るとともに、日本だけでなく世界の様々な国々で起こった自然災害の歴史について知識を得ることが、これからますます必要になっていくに違いありません。自分自身の思考の補助線を引くための一助になりそうな好著だと思いました。

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