大人のいない国
著者:鷲田 清一,内田 樹
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大人のいない国―成熟社会の未熟なあなた (ピンポイント選書)
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自分が子どもの頃、周りの大人は大人っぽかったかなと思い起こしてみると、案外無邪気な子どもっぽい人が多かったように記憶しています。長ずるにつれ、自分が大人になるためのモデルというのを探していたのだと思いますが、生活面でのモデルはいても、精神的な面を参考にしたいと思った人はあまりいなかったように思います。
日本は長い年月をかけて他国に肩をならべることの出来る国家を作り上げ、とりあえず明日のことを心配しなくてもいい社会のシステムが機能しています。しかし、そのシステムのありがたみを意識せず暮らしていると、ひとりひとりが強くなくとも社会生活を営むことが出来てしまい、その結果多くの未熟なままの大人が生まれてしまうのです。
人が成長するための一番の糧は心の葛藤であると誰かが言っていましたが、生まれたときからすでに「消費者」の立場で社会と相対し続けた人々は、心の葛藤を感じる前に、それを回避するための様々な手段を駆使して、葛藤という精神的なリスクから逃れようとしているかのように思えます。隣人が自分の家の前にゴミを捨てていったら、直接苦情を言うのが当然ですが、それを行政のサービスの不備のように判断してしまう。直接原因と関わることを避けることで、傷ついたりすること無く平穏に過ごすことが出来てしまう。
様々な価値観と接することで、自分のなかにも様々な考え方の様式を身につけるというのが成熟するということではないかと思っています。社会的なリスクが増えている現在、未熟なままで世の中を渡っていく事が難しくなっていると感じます。未熟な人たちばかりが動かせるシステムも、このご時世ではいつかは破綻を迎えるかもしれません。そのことに気づいた人たちのなかから、「大人のいる国」を目指す動きが、そろそろ出てくるのではと期待しています。
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